どこまでやるべき?個人塾のための不登校対応ガイドライン

どこまでやるべき?個人塾のための不登校対応ガイドライン


「不登校の生徒から問い合わせがあったけれど、受け入れていいものか迷う…」
「学校に行けていない子に、塾としてどこまで踏み込んで支援すべきかわからない…」

個人で学習塾を経営されている先生方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

現在、不登校の児童生徒数は過去最多を更新し続けており、学習塾にとっても「不登校生徒への対応」は避けては通れない課題となっています。

少子化が進む現代において、「勉強さえ教えていれば、いつか評判が広がるはず」という考えだけでは、多様化する生徒や保護者のニーズに応え続けることは難しくなりました。

しかし、大手塾では対応しきれない繊細なケアができるからこそ、個人塾は不登校の生徒や保護者にとって、学校でも家でもない「かけがえのない居場所」になる可能性を秘めています。

この記事では、不登校生徒への向き合い方の根幹となる考え方と、具体的な対応ガイドラインについて解説します。

※この記事は、2025年12月10日に開催したセミナーの内容を元に作成したものです。

「不登校の現状」:きっかけは「いじめ」ではない?

まず、私たちが向き合うべき、不登校のリアルな姿を知ることから始めましょう。

不登校のきっかけの意外な真実

文部科学省の最新データ(令和5年度)によると、不登校のきっかけで最も多いのは「やる気が出ない(30.1%)」で、次に多いのは「生活リズムの不調(25.0%)」、「不安・抑うつ(24.3%)」などです。

そして、「いじめ」が占める割合は最も少なく、わずか1.4%に過ぎません。

つまり、98.6%は明確ないじめ以外の理由で学校に行けなくなっています。

「家庭への満足度」は世界最下位という衝撃

さらに注目すべきは、日本の子どもの「家庭への満足度」が世界的に見て極めて低いというデータです。

PISA2022の調査結果において、「家族からのサポート」に対する生徒の評価は、世界最低という結果が出ています。

一方で、意外にも「学校への所属意識(満足度)」は世界で6位と非常に高い水準にあります。

つまり、日本の多くの子どもたちが「学校には満足しているが、家庭・家族に不満を抱えている」という結果となっています。

このデータは、不登校解決の糸口が必ずしも「学校のシステム」にあるのではなく、「家庭環境」や「親子関係」の質にこそ隠されていることを強く示唆しています。

なぜ不登校になるのか:鍵は「親子関係」にあり

では、学校で同じようなトラブルや勉強の遅れがあっても、学校に行ける子と行けない子がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。

「学校」と「家庭」の二軸で考える

不登校を「学校」と「家庭」の二軸で考えていきます。

学校側で嫌なことがあっても、家庭が子どもにとっての安全基地であれば、子どもは外の世界へ踏み出すエネルギーを蓄えることができます。

逆に、家庭が安心できる場所になっていないと、学校で少しのトラブルがあっただけで、心の糸が切れてしまいます。

学校での問題(いじめ・勉強のつまづき・人間関係・体調面の問題)は、不登校の「原因」ではなく、あくまで「きっかけ」に過ぎない可能性があります。

なぜ親子関係が大事なのか

不登校の解決において最も重要なのは「親子関係」です。

子どもと過ごす時間が最も長いのは親であり、親の接し方が変われば子どもは劇的に変わります。

子供が親を「心から信頼できる存在」だと思えていないと、不登校などの問題に繋がる可能性が高まってしまいます。

 

親を信頼できている子:学校で嫌なことがあっても「親がいるし、なんとかなるか」と思えるため、不安やストレスを適切に軽減できます。

 

・親を信頼できていない子:不安を一人で抱え込みすぎてしまい、いじめや成績不振、人間関係のトラブルなどが重なると「学校に行きたくない」と思ってしまいます。

 

親御さんが子供にとっての「安全基地」となるよう接し方を変えることが、再登校への最短ルートなのです。

塾経営者としてどのように対応すべきか

不登校生徒の保護者から問い合わせがあった際、塾としてどのように振る舞うべきか。
実務的なガイドラインをまとめました。

そもそも受け入れるべきか?

結論から言えば、「期待値の調整」ができていれば受け入れるべきです。

不登校生徒の受け入れは、通常の生徒以上に工数がかかりますが、その分、保護者の信頼は厚くなり、塾としての強力な差別化要因になります。

実務上の4つの課題と対応ガイドライン

不登校の生徒を受け入れる際、これらの実務的なハードルをあらかじめ『仕組み』として整理しておくことが、先生自身の負担を減らし、安定した経営を続けるための重要なポイントとなります。

 

1.保護者対応の工数:不安な保護者からの相談は増えるので、期待値の調整が重要です。相談対応の範囲を事前に明確にしておくことや、入塾前の段階で「保護者からの質問には一切対応できない」ということをご理解いただいた上で入塾を促すという方法もあります。

 

2.塾に来られない・リスケの問題:不登校の生徒は当日の気分で来られなくなることが多々あります。「2時間前までの連絡なら振替可能」など厳格なルールを定めつつ、「塾に向かわせるのは親御さんの役割」と役割分担を事前に共有しましょう。また、講師陣にも、あらかじめ「不登校の生徒なので、授業に来られないことがある」と伝えておくとよいです。

 

3.先生との相性:対人関係に敏感な子が多いため、先生との相性は極めて重要です。一度苦手意識を持たれてしまうと、通塾率が下がってしまいます。最初は勉強を教えるより、1コマ全て雑談に使うくらいの覚悟で、スモールステップでできたところを徹底的に褒めて信頼関係を築くことが優先です。

 

4.勉強の遅れへの個別対応:例えば中3でも中1の範囲が抜けていることが珍しくありません。そのため、どの学年で入塾したとしても、その子の学習すべき範囲をまず見極めることが重要です。一ヶ月で一年分を復習する特訓講座のような、個別の集中プランを提案し、短期間で追いつく道筋を示してあげてください。

ケーススタディ:現場でよくあるお悩みへの回答

不登校生徒と接する際、多くの先生が抱く不安に対して、以下のスタンスを参考にしてください。

【接し方の基本】特別扱いしすぎない
不登校だからといって過度に気を遣いすぎず、先生としての「軸」を持って他の生徒と同じように接することが、結果的に子どものプラスになります。

ただし、自己肯定感が下がっている生徒が多いため、ハードルを下げてプラスの面を見てあげる姿勢は不可欠です。

【教室環境の工夫】「社会に出るためのトレーニング」と捉える
教室をリラックス空間にしすぎる必要はありません。

将来、社会に出たときに幸せに生きるためのトレーニングとして、通常の教室環境の中で個別に相談に乗るスタンスで十分です。

【意思疎通が難しい場合】「当たり前」のハードルを下げる
例えばこちらからの質問に対して、表面的な返答しかない場合、無理に本心を聞き出そうとする必要はありません。

まずは「塾に来て、そこにいるだけで凄いこと」だと認め、良い点を観察して褒めることで、少しずつ生徒が心を開く瞬間を待ちます。

塾は「第二の居場所」になれる

不登校生徒の対応は、確かに手間がかかります。

しかし、勉強の遅れを取り戻し、子どもが自信を取り戻す姿を間近で見られるのは、教育者として大きな喜びです。

家庭を支え、学習を補うという両輪を回すことができれば、あなたの塾は地域で「困った時に最後に頼れる場所」として、唯一無二の存在になっていくはずです。


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